奇跡のすし?「龍寿し」。

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南魚沼は新潟でもかなり山の中。というより、太平洋側と日本海側のほぼまんなか、脊梁山脈の山懐。日本海はまだまだ遠く、一昔前なら誰もが「山の中で美味しい寿司を食べようなんて」思わなかったことでしょう。

ところがここ20年で物流は大きく変わって、県内各地の漁港から当日便で魚が届く時代になったのです。海の目の前のお店があぐらをかいているうちに、山の中のお店が努力を重ねて……というのが、この「龍寿し」の物語。「奇跡のすし?」というタイトルはちょっとおおげさかもしれませんが、「えっ?この店?」「こんなところにあるの?」というのが「龍寿し」なのです。

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龍寿しがあるのは、六日町市街から離れた、八海山の麓、「大崎」という集落。六日町から車で約20分、浦佐からも10分。正直、な〜んにもない田舎の集落です。
ただし、その昔は六日町と比べても賑わっていたそう。「大崎」は信仰の山、八海山の門前。映画館もあって芸者もいたといいますから、それはたいそうな賑わいだったのでしょう。上越線を敷くときも「機関車の煙が公害になるからそんなものはいらん」と、計画を拒否したという話もあるほどです。

とはいえ、今では本当に本当になにもない、田舎の集落。道の両側に家がびっしり並んでいるあたりが往時を偲ぶと言えばそうなのですが、美味しい店が成り立つわけもない、そして、こだわりのすし屋が成り立つわけもない場所なのです。

と書くと、きっと皆さんはこんなイメージを思い浮かべるでしょう。
「街にひっそりと佇み、看板もないような“知る人ぞ知る”店。格子戸をがらりと開けると、寡黙な主人が威勢良く“いらっしゃい!”と声をかけ……。品書きもなくおまかせ一本だけ」
いえいえ、まったく違います。

ひっそりした街に建っているのは事実ですが、看板はかなり大きめ。黄色の地に黒で「龍寿し」の文字が輝いています。
店内に入ると「いらっしゃい」とは声をかえられますが、店主はかなり優しそうな顔。けっして強面ではありませんし、変わり者の感じもまったくありません。
店内を見渡せば、小上がりもあって、メニューを見れば、居酒屋のようなつまみもたくさん、ドリンクメニューにはいろんな種類のお酒がずらり、カルピスもコーラもある!

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「すし屋って集落の居酒屋的な存在でしょ? だから店をオヤジから引き継ぐとき、地元の若い人にもっと来てもらいたいと思って、おしゃれな居酒屋っぽくしたんですよね。それから魚を勉強して、すしを勉強していくうちに、すしは変わりましたが、地元の人に楽しんでもらうつまみと酒はそのまんまなんです」
店主の佐藤正幸さんに聞くと、そういうことなんだそうです。

「だから正直、居酒屋風のつまみと、すしは自分で言うのもなんですが、質も違います」

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ということなので、龍ずしでは、すしとつまみのコースを頼むのがいちばん!
コースは5300円から9000円の3種類。おすすめはつまみ4品とすし12カンの7000円・9000円のコース。たっぷりと新潟の魚を満喫できます。
(ランチもありますが……、おすすめはやっぱり夜です)

「店を引き継いだばかりの頃は、新潟の魚にはあんまり興味がなくて、日本各地の本当にいい魚を仕入れることばかりを考えていました。東京のすし屋に食べに行って、名店がどんな港から仕入れているのか自分の舌と耳で覚えて、その後、その産地へ行って。でも数年前から、新潟の魚も意外といけるんじゃないか、と思うようになったんですね。そこで新潟各地の港を歩いて、自分だけの仕入れルートを築きました。のどぐろや南蛮エビ、アワビ、佐渡の本マグロなどなど。その頃からお客さんの層もグッと厚くなりましたし、遠くから食べに来てくれるお客様も増えました」

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とはいえ、佐藤さんは新潟のすべての魚が最高とも思っていません。だから鯛は常に淡路島ですし、マグロも近海の本マグロだけでなく、インドマグロも使います。
どちらにも転ばない、先入観だけで握らない、バランス感覚。日本全国の魚を見て、それから新潟の魚を研究して……。50歳になった佐藤さん(そうは見えない!)は、今まさに「旬」を迎えているのです。

東京の名店と比べれば、まだまだ隙もありますが、佐藤さんのすごいところは、基本的に「独学」というところ。だからここ数年でも大きく進化していますし、これからも進化することは間違いありません。そして新潟で5本の指に入るすし屋であることも間違いありません。

ふつうに考えれば、どう考えてもこだわりすし屋なんて成り立たない山の中。南魚沼の人でも不便な場所。そんな場所で進化を続けているのは「奇跡」と言っても過言ではありません。

「魚沼ですし?」と思う方も多いでしょうが、ぜひ一度、「龍寿し」を訪ねてみてください。継続と努力ってすごいなぁ、ときっと誰もが感じることでしょう。

【龍寿し】
http://www.ryu-zushi.com

新潟県南魚沼市大崎1838-1
電話 025-779-2169
営業時間
12:00〜14:00(13:30LO)仕込みの都合で営業しない場合もあります。
18:00〜22:30(22:00LO)
日曜は〜21:30(21:00LO)
定休日 水曜日
席数 26席(カウンター6席)
※支払いは現金のみ。

アクセス
関越自動車道六日町ICから国道17号・291号経由で約15分
小出ICから国道291号経由で約15分
上越新幹線浦佐駅からタクシーで約7分

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ABOUT THE AUTHOR

株式会社自遊人 代表取締役クリエイティブ・ディレクター 編集者岩佐十良
株式会社自遊人 代表取締役、クリエイティブディレクター。
2004年、活動拠点を東京・日本橋から新潟・南魚沼に移転。
そのライフスタイルが注目され 「情熱大陸」「ソロモン流」「カンブリア宮殿」などで紹介される。
2014年には南魚沼市・大沢山温泉に「里山十帖」を開業。

自遊人 www.jiyujin.co.jp
里山十帖 www.staoyama-jujo.com

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